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2010.09.01 読売新聞 夕刊に記事掲載されました

歯のX線写真、自動で照合…
群馬の歯科医ら身元確認用システム
日航機事故で奔走、父の苦労きっかけ

読売新聞(2010.8.10)

 身元不明の遺体の確認を迅速化するため、生前に撮影された歯のエックス線写真を電子画像でデータベース化し、遺体の歯の画像と自動照合するシステムが、実用化に向けて動き出そうとしている。

 開発者の一人は群馬県高崎市の歯科医小菅栄子さん(38)。警察歯科医を務めた亡父が25年前の日航機墜落事故で身元確認に奔走した時の苦労がきっかけだったという。

 日航機墜落事故の身元確認は、現場で発見された歯のエックス線写真と全国の歯科医などから取り寄せたエックス線写真を、目視で1枚ずつ照らし合わせて行われた。

 小菅さんの父親の篠原瑞男さんは高崎市内の歯科開業医で、事故では警察歯科医として無数の歯のエックス線写真を見比べた。事故で亡くなった歌手の坂本九さんの歯型の確認もしたという。

 今年64歳で急逝したが、生前、小菅さんによく「気の遠くなるような作業が続いたが、少しでも早い身元確認が歯科医が遺族のためにできるせめてものこと」と話した。小菅さんは尊敬する父親の後を継ぐべく歯科大で学び、卒業後の1999年から身元確認システムの研究を始めた。

 エックス線写真は一枚一枚撮影角度が違ったり、ゆがみがあったりして、自動照合は困難とも言われた。そこは、画像のゆがみなどを自動補正し、類似性の自動検出法を研究する東北大学大学院情報科学研究科の青木孝文教授(45)(情報工学)の協力で解決し、2006年にシステムは完成した。

 大規模災害時に損傷の激しい遺体の身元確認を迅速化できるほか、犯罪捜査や全国で発見される身元不明の遺体の特定にも応用できるという。昨年の警察歯科医会の全国大会で「作業効率が飛躍的に向上する」と注目され、実用化を目指し、日本歯科医師会が「日本法歯科医学会などとも連携し、IT化を促進したい」と試験運用の準備を進めている。

 小菅さんは「身元確認にITを導入すれば、作業効率がずっと上がるはず。早く身元確認できれば、早く遺族の元に遺体を返すことができる。それも私たちの重要な使命だと思います」と話している。

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