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2011年11月の記事一覧

2011.11.11 慰霊登山と身元確認支援システムについて、読売新聞 全国版社会面に掲載されました

歯 瞬時に照合
読売新聞(2011.11.1)

御巣鷹の悲願 被災地で実現

東日本大震災から7か月半。時間との闘いが続く身元不明遺体の確認作業に、群馬県高崎市の歯科医小菅栄子さん(40)らが開発した歯の検視記録と震災前の治療記録の照合システムが貢献している。小菅さんは、1985年に同県で起きた日航ジャンボ機墜落事故の際、気の遠くなるような身元確認作業を担った父の姿に打たれ、システム作りに取り組んできた。宮城県警に機械とノウハウを提供し手弁当で手伝っている。

高崎の歯科医らデータベース化

同県警の一室。小菅さんらは、遺体の歯の検視記録が届くと、パソコンに黙々とデータを打ち込む。すでにエックス線画像や治療の痕跡など、約1200人分(10月11日現在)の検視記録がデータベース化されている。行方不明者の歯の治療記録を入力すると、自動的に歯の特徴が似た遺体のデータが示される。最終的に複数の歯科医師がデータを精査して身元を特定する。

県警はこれまで、歯による照合を約1200体行い、約770人の身元を特定した。DNA鑑定による判明は約50人。歯の治療記録があれば、圧倒的に速い。
520人が犠牲になった日航ジャンボ機事故の際、小菅さんの父で歯科医の篠原端男さんは、遺体の歯の写真と歯科医院から取り寄せたエックス線写真を1枚1枚照らし合わせ、身元確認を行った。「迅速に身元確認できれば、遺体を少しでも早く遺族に返せる」。

昨年5月に64歳で亡くなった父が、そう願う姿を、小菅さんは、目の当たりにしてきた。学生時代には、事故が起きた8月12日に毎年、ともに墜落現場の「御巣鷹の尾根」を慰霊登山した。「父の苦労話を聞き、ご遺体を一刻も早く返すのに役立ちたいという思いが募った」

大学卒業後、照合システムの研究を始め、東北大の青木孝文教授(46)らと共同で2006年には原型をつくった。震災後、宮城県入りした小菅さんらが5月からシステムを稼働させると、同県警から「身元確認が格段に速くなった」と喜ばれた。

警察庁によると、10月31日現在、被害が甚大だった岩手、宮城、福島3県に身元不明遺体は852体ある。小菅さんらは震災前から。歯科記録のデータベース化を訴えてきた。日本歯科医師会は8月、データベース化を考える検討会を設置。実現に向けた協議が始まっている。

2011.11.11 慰霊登山と身元確認支援システムについて、読売新聞に掲載されました

父の遺業継ぎシステム開発
読売新聞(2011.8.13)

抜歯科医・小菅さん 「身元判明、高速に」

歯のX線写真で遺体の身元確認を素早くできるシステムを開発中の、高崎市上中居町の歯科医師小菅栄子さん(39)も12日、共同開発者の東北大教授青木孝文さん(46)らとともに、長男優哉君(11)と長女美優奈さん(8)を連れて尾根へ登った。

事故当時、警察歯科医だった小菅さんの亡父篠原瑞男さんは、犠牲者の身元確認という気の遠くなるような作業を、歯のX線写真を1枚ずつ目で確認して続けた。その父の背中が、小菅さんをシステム開発へと向かわせた。東日本大震災後、小菅さんは宮城県警に協力し、震災犠牲者の身元確認作業で手助けしている。

「事故や災害の犠牲者の身元が1人残らず判明しますように」。亡き父が身元確認をした歌手の坂本九さんらの墓標に手を合わせた小菅さんは、「ここは毎年来てるよね」などと優哉君と美優奈さんい向かい、事故を語り継いだ。

2011.11.11 海堂 尊氏の書籍で、院長の小菅栄子が紹介されました

『救命―東日本大震災、医師たちの奮闘』
海堂 尊著

抜粋

震災から二カ月も経過してくると、遺体の腐乱も激しくなり、歯茎から歯が抜け落ちて正確なチャートが取れなくなってきました。

歯がまだ残っているときは歯の形だけでなく、歯石が付いているとか、歯の磨り減り具合で咬み合せが分かるとか、そんなことも情報になるのですが、歯が無い状態になったらデンタルチャートでは情報が不足になってしまいます。

  そういうときにはX線が役に立ちます。
たとえばX線で1本でも特徴的な箇所の写真を撮るとか、歯がなくてもX線で根の治療箇所が分かれば、生前の治療で冠をかぶせるために根の治療をやったことが判明するわけです。

 初めは遺体の数が多くて時間もなかったので、写真やX線撮影は必要ないと言っていましたが、時間が経ってからの検死にとってはX線撮影が大きな頼みになりました。

これを助けてくれたのが、群馬県検死警察医の小菅栄子先生でした。
小菅先生は、お父様が御巣鷹山の日航機墜落事故での検死に尽力されたことがきっかけで、ご本人も身元確認の仕事を志されたという方です。

 X線の専門家でもある小菅先生には、今回のような災害現場で、どのようなX線撮影装置を使用すればよいか、また、どのようなルートで機材を調達すればよいか、さらには、現場でのX線撮影の際の放射線防護についてどのように対策すればよいかなど、さまざまなことを指導していただきました。

2011.11.11 海堂 尊氏の書籍で、院長の小菅栄子が紹介されました

『死因不明社会2 なぜAiが必要なのか』
海堂 尊著

抜粋

1985年8月12日、日航機が群馬・長野県境の山中に墜落した。遺体は激しく損傷していた上に暑さが腐敗を進行させ、顔や指紋による身元確認は難しかった。
当時はまだDNA鑑定技術は確立されていなかった。
歯は死後変形が少なく身元確認に有用だ。
このとき全国の歯科医から取り寄せた歯のX線写真と遺体を目視で1枚ずつ照合する、気の遠くなる作業が続いた。
約3ヵ月の期間と膨大な人員を要し、最終的に520遺体のうち518遺体の身元が確認された。

群馬の歯科医師、小菅栄子の父・篠原端男は地元の歯科医として、遺体の身元確認作業に携わった。
中学生だった彼女は、歯科医師に歯の治療以外に身元確認という役割もあることを知った。
1999年、歯のX線写真を自動照合する身元確認システムの研究を始めたが、当初は自動化が困難だった。
2002年から東北大学の青木孝文教授(情報工学)らと協力し、生体認証に多く利用されている「位相限定相関法」という超高精度画像照合技術を歯に適用した。

これによりX線写真のずれやゆがみを自動補正し、類似性の高い候補者を5%にまで瞬時に絞り込めるようになった。
歯科医の負担を大幅に軽減するこのシステムの原理は2007年に発表された。
誰が巻き込まれたかわからない地震などの天災やテロ事件では、生前X線写真を集めるのが難しい。
一方、日本の歯科受診率は高くX線写真も年間9000万枚以上は撮影されている。
これを生した東日本大震災では、地震と津波により現地歯科医院は倒壊し、診療録やX線写真が失われた。

身元不明社会、生死不明社会にしないため、大量検視に備えて歯のX線写真のデータベース化と緊急時の迅速な情報提供体制を整えておく必要がある。

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